和紙布とベンガラ染め -2-
こんにちは。
前回のkakimonoではベンガラ染めについて綴りました。
今回はいよいよ、和紙布誕生について。
一つ前の記事:-1-
和紙布の通販対応:online store
前回の話から時は流れて幾年か。
昨年の暮れ頃の話です。
ベンガラ染めの第一人者である、小渕裕さん。
大阪の染色工房“古色の美”で染め師として活躍しつつ、
ベンガラを使った小渕さんご自身の活動
“Yutakanairo”を運営されています。
ベンガラ染めの文化と色を
次世代に継承していくためのご活動。
日本国内だけでなく海外でも精力的に活動されており、
イギリス・ロンドンのクラフトフィスティバルなどにもご出展されています。
そのご活動の一環で
渋谷のとある展示に出展されると聞きつけた私は、
『せっかくなので』
と何気ない気持ちでお伺いする事を決めました。
今まで「古色の美の小渕さん」は知っていたものの
小渕さんご自身のご活動についてはあまり知らなかったのです。
どのような作品を作られているのだろう、と
ドキドキワクワク、いざ来訪。
そして出会ってしまったのがこちら。
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/84E631F2-7D95-42C5-A1D1-3553F5FC209C-768x1024.jpeg)
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![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/C60E9C98-89D0-418B-86CE-2CC13263B3E4-768x1024.jpeg)
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和紙100%の生地をベンガラで染めた着物、紙衣です。
『この生地を、色を、身に纏いたい』
そんな私の率直な想い、もといワガママが
今回ご紹介の“和紙布”の着想でした。
それにしても今見てもやはり鳥肌が、、、
ベンガラと煤によって生み出された淡くて美しい風合いと
神秘的な雰囲気を放つ和紙の生地。
触れてみると、そこには“独特”の質感が。
そう、この和紙、実はただの和紙糸ではなく
なんと間伐材を糸にしたという「木糸」の和紙。
大阪のとある地域で問題となっていた間伐材の処理を
糸の原料に活用するという大変な試み。
日本でも唯一の技術を有する機屋さんが取り組まれているそうです。
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/B3707178-D451-4D5C-B57B-BD40FB1147F0-768x1024.jpeg)
その木糸和紙を100%使用した、贅沢な大判布。
この素材感は言葉や文章ではどうにも説明できない“独特”のもの。
触れられた皆様、
“これは一体何ですか?”とやはり驚かれます。
和紙特有のハリとコシを持つしっかりとした質感。
しかし肌に纏うと一変、肌当たりは優しくて、少しひんやりと心地良い。
また使用を重ねる事で生地は徐々に柔らかくなってゆき
肌馴染みも増してゆきます。
色も素材も、自然そのものから生まれているからでしょうか。
まるで目には見えない世界に存在する神秘的な“何か”が
乗り移っているかのような。
そんな“気配”を感じる大布なのです。
和紙“布”と名付けたのは、
用途を絞りたく無かったため。
身に纏う事を主としながらも
テーブルやソファに敷いていただいても素敵ですし、
ほつれが気にならなければ好きな大きさにカットしていただいても構いません。
木糸という特殊な素材の存在感と
ベンガラ手染めによる特有の色味。
そして使い込む事によって生まれる、独特の経年変化。
全てが特別な一枚の大布を
皆様それぞれの様式で
自由にお楽しみいただけたらと思うのです。
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/F448A67B-2827-471E-B1C4-5FA8A5561630-768x1024.jpeg)
全長222cm×幅115cm(個体差あります)。
大変な大判で、
お世辞にも使い勝手が良いとは言えません。
しかし纏った雰囲気が他には無いですし
何よりも理由がありました。
和紙布の両端には、生地の耳(端)をそのまま利用しています。
木糸和紙の背景を知り、
素材をできる限り無駄にはしたくなかった。
(「耳」の質感も素敵ですし。)
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/54BD164B-33EB-4BA7-A4D3-AEE023D44465-768x1024.jpeg)
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/C10C3036-A918-4CCD-92EF-9C424FC97ED3-768x1024.jpeg)
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/A0EC4E2D-95D3-495A-B800-FA56F4F0314A-768x1024.jpeg)
またほつれ留めのステッチやタグを吊るす糸には
フリンジを作る際にほぐした緯糸をそのまま使用しています。
これも素材を無駄にしない工夫。
ほつれ留めはいつかは必ず抜けるので断ち切ったままでも良いのですが
何と無くこのような形に。
そしてお気づきの通り・・・
これら全ての仕上げ工程はmienisiによる手作業です。
![](https://mienisi.net/wp-content/uploads/2022/04/29AC3E7C-D516-4189-A687-DBD00C615560-1024x768.jpeg)
小渕さんが和紙布を染めているそのご様子。
一枚一枚、手染めで丁寧に仕上げて下さっています。
写真は、2色のうち“煤竹”と名付けたお色。
ベンガラ染めに「煤染め」と呼ばれる染色を
重ね染めしています。
そしてもう片方のお色“胡粉”は、
和紙の舞台衣装に使用された
ベンガラの白染め仕上げを元に
生まれたお色となっております。
煤けた茶と、清い白。
どうぞお好きなお色をお選びくださいませ。
木糸から作られた和紙という素材も、
ベンガラの染料も、
全てそのまま自然に還す事ができる天然素材。
自然の営みの中で完結する大布です。
近年のアパレル業界における環境問題はとても深刻。
決してサスティナブルと大声で言えるような取り組みを
当店mienisiが行えているわけではありませんが、
和紙布然り、染め直し然り、
“より良い物を末永くご愛用いただく事”
それを決して疎かにしてはいけないと思うのです。
自分達ができる事をできる範囲で取り組む。
ただそれだけでも、良い方向へきっと導けるはず。
そう信じて今後もmienisiらしい物をご提案してまいります。
長々と書き綴ってしまいましたが
“和紙布”
是非とも店頭及びオンラインショップにてご覧ください。
遠方の方もどうぞお気軽にお問合せくださいませ。
それでは、また。
こちらの記事は-1-から始まっています。
和紙布のディテールと通販対応はonline storeをご覧くださいませ。