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ISTINTO −革を染める人− -2-

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“ISTINTO Order Exhibition”
2022.4.29〜5.11(無休)
※online orderも同時受付中、InstagramやMail等でご連絡ください

皮革に刻まれた『いのちの証』を

あるがまま継承し表現する、

“ISTINTO(イスティント)”のモノづくり。

その最も特異な部分である

“素材選定”と“染色技法”について、

いつもより少しだけ専門的な話も交えて

書き綴っていけたらと思います。

 

 

通常、革工芸を営む作り手は

タンナー(製革業者)から直接、あるいは仲介の卸業者を経て「革」を仕入れます。

そしてそれをそのまま、もしくは2次加工を施し、

成形していくのが一般的な流れ。

ISTINTOの作り手・熊藤氏も

“タンナーから革を仕入れる”

という根本は同じです。

 

しかし彼のモノづくりは、

“タンナーとのコミュニケーション”から始まります。

 

そもそも、

一口に「革」と言ってもその姿は多種多様です。

種類、部位、色、鞣し、仕上げ、etc…

様々な特徴、向き不向き、風合いや経年変化に至るまで全く異なります。

ですが周知の通り、

“一定以上のクオリティ”を求める作り手の多くは

同じようなタンナーや革を選ぶ事が多い。

BadalassiやDU PUYやGUIDIしかり、

相応の技術とセンスを持つタンナーは

やはり限られているのです。

 

その中でISTINTOが行なうのは

信頼のおけるタンナーとの“共作”。

衣服で例えるならば、

“オリジナルテキスタイル”の制作です。

なので彼は作品毎に、

使用する革の種類(牛、馬、鹿など)、

部位(ショルダー、ベンズ、コードバンなど)、

それらは当然としてなんと“鞣し方”まで考慮。

g単位の細かな加脂調整を行ない

作品と最も相性の良い状態に仕上げていく。

それぞれのアイテムに理想とする革を使用しています。

 

思い描く革の探求。

これは誰もができるかと言えばそうではなく、

タンナーとの圧倒的な関係性が不可欠です。

皮を鞣す技術は、タンナーがタンナーたる所以。

自分達が生きるための命綱。

同業者は疎か作り手であっても

簡単に立ち入る事は許されません。

仮に可能だったとしても、

「革」への深い知識が無ければ意味を成さない。

いえ、その理解が及んでいるからこそ

彼はタンナー達と対等な関係性を築く事ができたのです。

革の事、タンナーの事を深く理解し、

根拠に基づいて「共作」する。

 

そしてその結果は

“タンナーと同じ手法で染色できる事”に繋がっています。

染色技法もやはりタンナーしか知り得ない技術。

また染色に使用する材料も

タンナーでないと仕入れる事すらできません。

人と革との関係性構築。

それを何より大切にしてきた彼だからこそ、

今の作品が確立されているのです。

 

さて、ISTINTOの魅了にもう一歩近づくために

「革」という素材について

少し深掘りしてみましょう。

 

動物達から狩られた「皮」を

それぞれの手法で鞣して「革」へ。

その本来の目的は皮を腐らせないための処置でした。

知識も技術も何も確立されていなかった時代、

人々は地面に穴を掘って「皮」を入れ、

動物の内臓や糞尿で漬けたんだとか。

木の棒や動物の骨などを使って皮を叩き、

柔らかく加工していた事まで判明しているそうです。

 

現代の鞣しでは、

「皮」を洗浄・脱毛・脱脂し

植物性タンニンや薬品に漬けていきます。

この状態を終えたものがいわゆる「ヌメ革」です。

その後、更に複雑な仕上げ工程。

革漉き、再鞣し、染色、その他様々な加工を施す事で

初めて「素材」として作り手に供給されます。

多岐にわたる手法と材料の選定。

それらを複雑に絡み合わせる事で

各タンナーは自分達の「色」を明確にしていきます。

様々な革を鞣せるタンナー、

逆に一種の革に特化したタンナー、

多彩な仕上げを展開するタンナー、

古代から受け継がれる伝統的手法のみを取り入れるタンナー、等々。

 

また「鞣し」も、

大きく分けると2種類存在します。

一つは「クロム鞣し」。

化学薬品を用いて短期間で均一に仕上げていく手法。

現存するタンナーの約9割はこの方式を取り入れているといいます。

もう一つが「タンニン鞣し」。

植物性のタンニンに革を漬け込んで鞣していく手法。

革好きの方なら一度は耳にした事があると思います。

原始的な風合いを持つ革、経年変化を楽しめる革に仕上がるのが特徴ですが、大変な手間と時間がかかります。

そして更に、この「タンニン鞣し」にも

複数の種類がある事はご存知でしょうか。

ドラムと呼ばれる大きな機械で叩き込んで浸透させていく「ドラム鞣し」。

木製の浴槽のような場所で段階的に漬け込んでいく「ピット槽鞣し」。

更にはクロムとタンニンを複合させる方法まで…。

 

これら様々な「鞣し」に加えて、

染色や仕上げの工程は別で存在するのですから

いかに「革」の種類に限りが無いか。

想像に難くないでしょう。

 

しかし大切なのは

“どの手法が優れているか”

ではありません。

自らの作品に対して

“どの手法が適しているか”

それを見極める事です。

 

話をISTINTOに戻しましょう。

“タンナーと同じ方法で染色できる作り手”

何度かそのように綴らせていただきました。

つまり熊藤氏は作り手としてプロフェッショナルというだけでなく、

「革」への深い知識と愛着がある。

だからこそ「染色」が行えるのです。

 

「皮」とは動物達の生きた証、

つまり「繊維組織」の塊です。

規則性のある織物の組織とは異なり、

一枚一枚に個性がある素材。

生まれた環境、食べてきた物、動物としての習性、

それぞれの生き方によって多様に変化するのです。

 

記述の通り、製革には様々な手法が存在します。

個性である“証”を塗り潰して均一にする事もできる。

しかしISTINTOは

“あるがまま”の姿こそ最も美しいと捉え、

革の種類や部位を作品によって使い分ける。

一つひとつの革に眠る生きた“証”を

作品という“カタチ”にするために。

そしてその表情を殺さず“生かす”のが

ISTINTOの“製品染め”。

繊維組織の違いによって染料の入り方が変わり、

“証”は必然的に強調されていきます。

 

ISTINTOの作品は、革は、

本当に生き活きとしている。

まるで自然からそのまま生まれ落ちたように。

 

 

自ら染色を行う彼の手は

爪の中まで真っ黒です。

偶然ですがそこには既視感がありました。

言葉以上に物語るこの掌を見た時、

『彼と一緒に何かしたい』

そう思ったのです。

 

長々と綴ってしまいましたが

もう前置きは十分だと思います。

後は皆様の目と手で直接、感じ取っていただけたら。

彼の作品を私達mienisiからご紹介できる事、

とても光栄に思います。

GWの大切な一日を

彼の作品と革達のために。

 
 
 
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