YANTOR Special Exhibition in 2025
▽期間▽
2024.11.1〜9(無休)
▽デザイナー在廊日▽
11/1(土)
11/2(日)
今展の始まりは
YANTORがインドで生み出した
一枚の手織布でした。
バングラデシュとの国境に程近い
西ベンガル州のPhulia(フリア)
その小さな村の熟練の織職人が織り上げる
限界番手のカディコットン
数えきれない糸数を手で撚って作ることから
それは“ZERO COUNT”と名付けられました。
一目見た時から
ずっと惹かれ続けているこの一布には
YANTORがこれまで歩んできた
紆余曲折の“軌跡”が秘められています。
唯一無二のオールハンドメイドファブリックと
それに相応しい、今展の為に用意した作品達
いよいよお披露目させていただきます。
⠀
まずは改めてブランドのご紹介を。
− YANTOR(ヤントル)−
土地・身体・衣服の関係性から生まれる
“状況的なもの=ファッション”と捉え
「SITUATIONS」をコンセプトに
2009年からコレクション発表を開始
過去から継続する「文化」と
常に変化していく現代の「技術」や「環境」を照らし合わせ
“布を纏う”という起源的な感覚を
現代ファッションに織り込んで提案する
デザイナーの坂倉さんとパタンナーの吉田さんは
その土地の習慣や気候、宗教に適した素材や
土着の技法によって作られる布や民族服の構造に着目し
コレクションに落とし込む事を意識しています。
例えば2013年から始まったプロジェクト
特定の地域をテーマに作ったコレクションを
まさにその地域で生活する人々に着てもらい
「衣服を着る」というコミュニケーションの中で
偶発的に生まれたシチュエーションを
人々の生活や文化と共に記録しています。
過去にはインド・ヴァラナシやコルカタ
チベット文化圏のラダック
ミャンマー・インレー湖などで行なわれ
デザイナー自身も現地に長期で滞在しながら
“衣服=ファッション”をツールに
地域の人と“コミュニケーション”を取り続けています。
衣服を着るという日常的行為を切り取る事で
可視化される、そこに確かに存在する人々の様式
土地と衣服の関係性に焦点を当てた
YANTORらしいコレクションの在り方です。
YANTORの表現媒体はモノにとどまらず
写真、映像、インスタレーションなど
様々な手法を用いた発表を続けています。
(お気になられた方は是非YANTOR公式サイトにてご覧ください)
その歩みが実を結び
2021-22年にかけてタイで行われた
『Thailand Biennale Korat 2021』にて
”village traces”を発表
様々な反響を得た同作品は
2023年に「金沢21世紀美術館」に収蔵される事となり
2024-25年に同美術館の展覧会に出展されました。
これはファッションという分野においては初の快挙であり
美術的な価値に加えて
何百年と収蔵されるにあたり
様々な観点から高い基準を満たさなければ至らない
非常に稀有なことです。

元々、民族衣装や民族音楽から垣間見える
「作為的ではないもの」に美しさを感じていたという
デザイナーの坂倉さん。
「衣」は表に現れた一つの結果であり
その土地の風土や歴史や宗教観が前提に在り
その場所で生まれその場所で消費される「光景」こそ
まさに「民族衣装の在り方」ではないか。
そんな想いから
自身がその土地の衣服を作ったら
それを現地の人に見てもらいたいと
最初のコレクションでその想いを実行されます。
その発想力はもちろん行動力たるや
計り知れません。
そしてそれが先ほど記述したプロジェクト
“ONE by ONE”にも繋がっていくのです。
そんなYANTORの活動に共鳴した
インド・バラナシのとある職人が
「ぜひうちにYANTORの布を作らせて欲しい」とアプローチがあり
インドでのモノづくりが本格的にスタートする事となります。

インドの布において
やはり決して切り離せない存在が
手紡ぎ手織りの綿布「Khadi(カディ)」です。
かつてインド独立運動の象徴ともなったそれは
その意義に及ばないほど「当たり前」の日常として
今もインドに住む人々の生活の中心にあります。
長い時間をかけて歩くように
ゆっくりと紡がれる糸と、織り込まれる布。
手紡ぎ手織りの最たる魅力の一つは
「自由度」だと坂倉さんは話します。
つまり糸までもを手で創るその工程は
「綿」という一つの原料に
様々な技法で変化を加える事ができるのです。
同様の素材を使いながら
全く異なる「布」が生まれる面白さと
その過程に興味を持った坂倉さんは
これまでにも糸本数や織柄を変えて
様々なKhadiを発表されてきました。
YANTORのモノづくりの中でも
一際重要な存在となった布
そしてそれは
今回mienisiがご提案させていただく
“ZERO COUNT KHADI”へと紡がれていきます。

前述の通り
この“ZERO COUNT KHADI”は
当然の事ながら手紡ぎ手織り
つまりオールハンドメイドのファブリックです。
一人の職人が一巻きの布を織り上げるまでに
途方も無い時間と労力が割かれています。
この特別な布は
デザイナーの坂倉さんと
カディの名生産地であるコルカタの
バングラデシュとの国境にほど近い田舎町「フリア」で
10年以上YANTORと付き合いのある
織職人・カルティックさんと共に
二人三脚で生み出されています。

生地制作において
最初に始まるのは「世界観」の擦り合わせだと
坂倉さんは話します。
非常に自由度の高い製作工程だからこそ
作る人と描く人
それぞれの想いが微細でも“ズレ”てしまうと
全く異なるモノに成る事は想像に難くありません。
坂倉さんは
時には現地に赴きながら頻繁にやり取りを重ねて
一つの生地を一緒に作り上げていきます。
手紡ぎ手織りならではの「自由度」を活かし
様々な角度から新しい生地に挑戦する中で
これまでに「2ply」や「6ply」といった
糸を撚り合わせた「本数」で異なる生地を織り
コレクションとして発表してきました。
そしてそれが必然
カルティックさんが織れる限界の太さ
つまり“ZERO COUNT”の製作に繋がります。
このニュアンスの強い生地を生み出すまでには
これまで以上に密接なコミュニケーションと
幾度もの失敗を重ねて
ようやく辿り着いたと坂倉さんは話します。
YANTORのこれまでの歩みと
職人との確かな信頼関係によって
ついに生まれた“ZERO COUNT KHADI”
それに焦点を当てるのが
今回の企画展となります。
お待たせしました。
本企画展の別注企画の数々
ぜひご覧ください。















《Special Ⅰ》
ZERO COUNT KHADI × exclusive natural dye
Mud dyeing by Kanai Kogei
“Pasted Patchwork Shoulder Bag”
・size M
Off White:¥60,000- (+tax)
Mud Dyed Brown:¥66,000- (+tax)
・size L
Off White:¥70,000- (+tax)
Mud Dyed Brown:¥77,000- (+tax)
この“ZERO COUNT KHADI”で
mienisiらしい別注企画を考えた時
直感のように頭に浮んだのが
今回の“纏うような布袋”
そして“泥染め”でした。

チベット僧の「袈裟」からインスピレーションを受けた
身体の一部となるようなショルダーバッグ
縫製は全てデザイナー自ら手がけてくださっています。
そして
それを染める染師はやはり
mienisiではお馴染み
日本は奄美大島の金井工芸様
泥染めによる果てなき濃茶で
晒しの白を美しく染め上げていただきました。
生地が厚手で密度も甘く
濃色を施すには一苦労用する生地ですが
もはや言うまでも無く見事な濃泥茶に。
原料の採取に始まり
撚り、織り、染め、そして縫製
意図せずその全てが職人たちの「手」仕事によって
完遂された作品です。



一枚一枚、不均一な布を
パッチワークのように縫い繋いだバッグ
それは布という「平面」が
バッグという「立体」になる
工程の一部を切り取った姿であり
更には強度を確保するという
用の美でもあります。
非常に雰囲気のある手紡ぎ手織り布ですが
織密度は甘く、糸もほつれやすい為
随所至る所に隠しステッチを入れて仕上げています。
使用している布分量から見ても
鞄というよりも衣に近い
そんな“一着”です。


背面の不均一なテクスチャーは
経糸を抜く事で表現されています。
「布」とは「糸」の集合体
それは言葉で分かっていても
実際にはピンと来ない人も多いのではないかと。
YANTORでは過去に
「糸を抜く」という行為によって
その構造を可視化した事があり
そのストーリーが今回のバッグにも活かされました。
布と糸の境界を探りながら
「手」で織ったものを「手」で抜いていく
どこから糸で、布で、衣なのか
YANTORのコンセプトでもある問いに
デザイナー自ら答えるように製作されました。


いわゆるしっかりと備えられた西洋の作りではなく
布を貼ってそこを切り開いたような
“Pasted(貼り付けたような)Pocket”
これはZERO COUNT KHADIと共に生み出された
YANTORならではのディテールの一つであり
やはり今回のバッグにも無くてはならないものとして
外付けで二つ、縫い付けていただきました。












《Special Ⅱ》
“Long Shirt Coat”
Off White:¥90,000- (+tax)
Mud Dyed Brown:¥105,000- (+tax)
Size: M,L
私自身、別生地で愛用しているYANTORの型
“Long Shirt Coat”を
やはり“ZERO COUNT KHADI”で。
私にとってまさに夢のような組み合わせが
今展で実現に至りました。







バッグ同様
“Paste(貼り付けたような)Pocket ”が特徴の
一枚で絵になる一着
ワイドなシルエットに比例する
圧倒的な“ZERO COUNT KHADI”の存在感と
身に纏う事で知る
手紡ぎ手織りならではの柔い質感
空気を孕んだ布は
風の通りを和らげ
衣の内側の温度を微調整してくれます。
まさに秋冬の白。






そしてそれを
やはり金井工芸様の“泥染め”により
更なる無二の一着へと昇華。
企画展という機会を経て
ようやく交わった二つの要素は
最高の「カタチ」で表現されました。
製品染めによって織密度は詰まり
サイズ感や質感にも微細な変化が現れています。
「色」というよりも「そのもの」を選ぶ
そんな感覚にさせてくれる2色かと。




先ほどのバッグと重ねる事で
それらは「一つの衣」として完成します。
纏うバッグか、シャツコートか。
是非店頭にて見定めていただけたら。

《Special No.3》
“The Reborn Project”
−naturally dyed archival pieces−
こちらは写真が間に合わなかったのですが
一点物の「泥染め」作品もご用意しています。
YANTORのコレクションで発表された
“ZERO COUNT KHADI”の別型と
それとは異なるKhadiで構成されたプルオーバーなど
複数の作品を泥染めにてご用意。
加えて
先ほどの着用写真でも着ている
私自身がやはり愛用している“JUDO PANTS”や
YANTORが所持する
様々なarchive達が
多数、mienisi店頭に集います。
2つの特別な作品と合わせて
こちらも是非ご体感ください。

YANTORと共に創り上げた
mienisi秋冬の企画展
その全てをご紹介させていただきました。
企画展中も随時Instagramよりお披露目していきます。
YANTORが歩んだこれまでの軌跡
そしてコレクションに秘められた様々なメッセージが
今展の衣服と共に届けられますように。
皆様のご来店心よりお待ちしております。

