メイン コンテンツにスキップ

LENSE −カタチの探求者 Ⅰ−

こんにちは。

店頭・WEBにてご紹介しております

2022 Autumn & Winter Collection.

mienisiとして2回目の秋冬を迎えております。

各ブランド様より思い想いの作品達が届いておりますが、

今季新たにお取り扱いさせていただく作品達もございまして

本日のご紹介は、その中の一人。

ラックにかかっているだけでは見過ごされかねない

“シャイ”な子達ですが

ひっそりと、しかし大胆に

“異質さ”を秘めております。

それでは参りましょう。

New Brand
“LENSE(レンズ)

デザイナーは世界的に有名な彼のメゾンブランドで

“パタンナー”として約8年間実績を積んだ強者。

パリなどのファッションウィークに同行するなど

その実力は折り紙付きです。

 

デザイン、パターン、そして縫製までの全てを

デザイナー自らの手で手掛ける

ハンドメイドのコレクション。

しかし“ハンドメイド”に特別な拘りは無いと言います。

目を惹くのはやはり

独創的で秀逸なパターンメイキング。

彼の手から生み出される作品群は

一着の「衣服」というよりも

一つの「構築物」という表現が近い。

“パタンナーとして何ができるのか”

カタチへの飽くなき探求は

計算し尽くされたディテール群と

紙面上では表現しきれない僅かなニュアンスを

端麗な手仕事(彼自身はノイズと言いますが)で

補完するコレクション。

コンマ1mmの世界を手仕事(ノイズ)で構築する事は

秩序と無秩序を混在させる

ある種の矛盾を秘めた行為。

しかしその矛盾こそ

作品をより奥深いモノにしていく要因…

 

…と、抽象的な表現はこれぐらいにして

愛すべき一着一着に目を向けていきましょう。

“Tuck One Piece Cotton Typewriter”

 

LENSEというブランドの“異質さ”が

顕著に表現された衣服だと思います。

2022AWのテーマ“Tuck”を体現する

無数のピンタックが施された背面と

ミニマルな前面との対比が美しいワンピースドレス。

 

 

特徴的なコード使い。

片方は縫い付けられ、片方はボタンで留める仕様。

前に持ってきて結び付ける事はもちろん

後ろでアシンメトリーに垂らしてしまうのも格好良い。

重ねると生まれる絶妙な“ズレ”がまた良きです。

 

このコード使いに対する熱い想いは

ぜひ違うモデルにて後述する事とします。

(長くなりすぎるので、、、)

今回の本命はココです。

 

この無数のピンタック。

現代に流通されている衣服の中で

これほど手間のかかったピンタックを施したものは

ほとんど皆無と言ってもよいのではないでしょうか。

通常、ボリュームを持たせたいのであれば

用いるのは圧倒的に「ギャザー」。

なぜなら作業工程が全く違います。

生地を寄せてほぼ直線に縫う事と

一本一本、線のような縫製を、何度も手掛ける事。

服作りに疎い私でもすぐさま理解が及びます。

しかしLENSEのデザイナー曰く

“ギャザーは縫い手の仕事”、と。

パタンナーとしての意義を問いかけた時

ギャザーという“縫う力”に頼るのではなく

“設計力”をデザインに取り入れたいと考えたようです。

 

その中で挑んだのが

今季のテーマであるピンタック。

さて、それはどういう意味なのでしょう。

実はこのタック、

全て一定の平行な線に見えますが

身体の傾斜に合わせて極僅かに“パターン”が変えられています。

え、と思われた方、上の写真を。

写真は別モデルのSkirtで、トワルの状態です。

ピンタック1本1本に

手線が引かれているのが見えますでしょうか。

まさに狂気的なパターンメイキング。

一体どれほどの時間を費やして

生まれてきた事でしょう。

 

そして…つい先ほど申し上げました。

LENSEというブランドは

デザイン、パターン、縫製までの全てを

“デザイナー自らの手で”手掛けています。

うん?つまりこのピンタック、

「全て貴方が縫っているんですか・・・?」

思わず聞いてしまいました。

「はい、そうです」

当然の如く答えるデザイナー。

展示会場に一歩足を踏み入れた時から

その空気感はヒシヒシと伝わってきたのですが

やはり普通では無かった。

 

というより変態です。笑

 

パターンをより複雑・難解に引くだけ引いて

残りは工場に丸投げ…ではありません。

自ら引いた無数の線を

自らの手で縫い上げる。

自分で自分を追い込むようなこの行為、

ちょっとやそっとの変態加減では成せませんよ。

 

デザイナーがタックに込めた意図は

シルエットのボリュームに限りません。

無数のピンタックを施した箇所、

そこには生地の連なりよって

特有の“硬さ”が生まれます。

写真のように斜めから覗くと分かりやすいのですが

タック部分だけシュッとしているのが伝わるかと。

これが下部の“柔らかな”タックギャザーと対比され

一着の洋服の中に複数のテクスチャーが同居する事になります。

本当に、どこまでも興味深い衣服。

 

 

 

タックの説明で終わってしまいそうですが

物語には続きがあります。

ボタンが見えない比翼仕様のフロント。

隠れていますが前開きはボタンなので

全て開いて羽織りとして着用する事もできます。

何かを訴えかけるような後姿に対して

極めて静かに、冷静に振る舞う前のカタチ。

その対比の着想となっているのは

なんとメンズのプリーツシャツだと言います。

そう、目を凝らしてよくよく見ていくと

メンズシャツの面影が浮かんでくる。

 

 

まず、ピンタックの上の部分。

どこかで見た事のある形状です。

そう。これはドレスシャツの“背ヨーク”。

 

 

分かりやすいように

KLASICAの白シャツも載せておきます。

ぜひ見比べてください。

そしてもう一つ。

 

 

目を凝らさないと見逃してしまう、裾。

当たり前の如く左右非対称ですが
(もはやその手間には触れません)

丸みを帯びた曲線が見えます。

 

 

そう、この部分。

シャツのサイドヘムを意味しています。

(KLASICAのシャツはヘムが特殊で分かりにくいですが、、)

 

あえて意匠を秘める行為。

そこにはデザイナーの根底にある

建築学のエッセンスが見え隠れします。

専攻中最も感銘を受けたという

近代建築の巨匠「ミースファンデルローエ」

“God is in the detail”

“Less is more”

LENSEの衣服は本当に静かです。

なのでぜひ皆さんから語りかけてあげてください。

そしたらきっと飛び込んできてくれるはず。

もちろん、想像を越えた角度から。

 

 

最後に使用されている生地のご紹介を。

“タイプライターコットンクロス”

綿麻織物の聖地・浜松で生産された

滑らかな質感のテキスタイル。

軽くて、とても肌当たりが良い。

普段使いにも持ってこいの生地感ですね。

mienisiとしては珍しい(?)

生地の特性が後から追いかけてくるような衣服。

それだけ、全てをカタチが物語っています。

 

予想通り一着のご紹介が長くなってしまったので、

2つにお分けしますね。

後半でも引き続き各モデルにフォーカスしていきます。

どうぞお楽しみに。

 

 

次のお話:-2-

 

category :