noriakisakamoto 花器展 −花と空間の関係性−
2022年2月。
今年最初の企画展を開催致します。
noriakisakamotoの花器展。
今回はその概要と作り手・坂本氏の知られざる生い立ちについて、
少しだけ書き綴っていきたいと思います。
“noriakisakamoto 花器展”
−花と空間の関係性−
2022.2.19〜3.2(会期中無休)
ジュエリーブランド“iolom”の坂本氏が
自身の名を冠して手掛けるオブジェクトライン“noriakisakamoto”。
真鍮を初めとする金属素材を駆使し
独特の技術とアプローチによって類稀な作品群を生み出します。
その中で最も代表的な作品、
“花器”にフォーカスするのが今企画展です。
昨年からご紹介しているスタンダードな花器に加えて
お披露目していない数々のarchive、
そして今展にて初公開となる
新作の花器達をご紹介させていただきます。
また、今展では特別な事がもう一つ。
魅力的な作品達と共に空間を彩る匠として
“花屋西別府商店”様に空間装飾を施していただきます。
ただ単に作品を販売する場にはせず、
mienisiの店内に花々が咲き乱れる
インスタレーション形式の展示会へ。
もちろん、花器と共にお花をご購入いただく事も可能ですよ。
個人的にもとてもとても楽しみにしていた今回の展示。
日本国内では大々的なアプローチはされておりませんが、
実は海外で非常に人気の高いnoriakisakamotoの作品。
アメリカ・ヨーロッパ・中国などの各国に存在する
高名なギャラリーで展開されています。
またそこにはきちんとした理由と背景が。
あまり語られる事のなかったnoriakisakamotoのモノガタリについて
少しだけ書き綴っていけたらと思います。
noriakisakamotoの歩みは空間デザインからスタートします。
元々内装設計やインテリアプロダクトに興味があった同氏は、卒業後海外へ。
語学に優れた訳でも知り合いが居た訳でもなく
ほとんど身一つで飛び込んでいったそうです。
様々な経験を経ていくうちに
坂本氏は理想と現実とのギャップに苛まれます。
『自らが影響できる事象の限界』
“空間”という大きなモノを生み出すには
幅広い“人”と“事”との関係性が宿命です。
そうではなく“自らの手と感性”で
限りなく完結できる創作は無いだろうか。
自問自答と模索の日々を積み重ねた結果、
坂本氏はついに“ジュエリー”と出会います。
日本へ帰国後、
“iolom”の前身となるブランド“valus”をスタート。
『ジュエリーは極小の空間デザインなんです』
そう語る坂本氏が手掛けるコレクションは
身に着ける装飾具という枠組みを安易と飛び越えていきました。
その後、現ブランド“iolom”をスタート。
より洗練された独創的なジュエリーを手掛けつつ
坂本氏はある日思い立ちます。
『より空間に作用するような作品と共に、自らの原点に立ち返りたい』
“noriakisakamoto”がスタートした瞬間でした。
数々の作品と経験を経て立ち上がった同ライン。
そして最初に生み出されたのがまさしく“花器”だったのです。
今展テーマとしています“花と空間の関係性”。
それは元々、坂本氏がインテリアデザイン時代に取り組まれていたテーマでもあります。
花一輪が人間に作用する効能は多大であると同氏。
目で見て、手で触れて、匂いを嗅ぎ、質感を確かめる。
五感そのものを本能的に刺激する“花”という存在。
しかしそれを引き立てる“器”は、
案外ありきたりな物で溢れている事に気づくのでした。
坂本氏ならではの真鍮製の花器。
デザインソースとなったのは意外にも日本の物、
石や金属で作られる灯火用具“灯籠”と
茶室に飾られる“一輪挿し”だったと言います。
日本美的エッセンスを取り入れつつ
直線的でミニマルなフォルムと
金属の力強い素材感で表現。
特に“緑青”を施した作品群には目を惹かれるのではないでしょうか。
器と背との空間に生まれる絶妙な“間”は
手持ちできる機能性と、
花を生けた時に壁を汚さない配慮、
そして花を引き立てる余白を残したかったと、同氏。
一見して伝わらない細部にまで
その意匠は込められているのです。
この一つの花器をきっかけとして様々な形に派生し
今では数えきれないほどのarchiveが存在します。
今展ではできる限りそれらを取り揃えていますよ。
もちろん花器以外にも様々な作品群が並びます・・・が、
詳細は展示のお楽しみとして。
その存在感、是非とも直接お手にとってご覧ください。
誤解を恐れずに言うならば、
noriakisakamotoの作品は万人に受ける物では決してありません。
何にも媚びず、唯一無二を目指すモノづくり。
坂本氏は一作家ではなく一表現者であると私は捉えます。
その魅力、今展の“空間”で余す事なくお伝えできたら、、、
皆様にはそんな“空間”の一部となっていただき、
そして持ち帰っていただけたらと思っております。
“noriakisakamoto 花器展”
どうぞよしなに。